個人投資家の間では常識的な慣行かもしれませんが、年末になると、株式の損だしが行われます。
基本的には節税になりますが、人によってはできない、もしくは違う形での節税対策をすることになるかもしれません。
メリット・デメリット・注意点などを含め解説していきますね。
- 損だしとは?
- 損出しの注意点
- 損出しのやり方
- 損だしにかかるコストを抑える
- 損だし実践
- 米国株でも損だし・損益通算ができる
- NISA口座は損だし・損益通算はできない
- 株主番号が変わる可能性がある
- まとめ
損だしとは?
含み損のある銘柄を、一旦売却することで損失を確定させてしまいます。言ってしまえばこれだけのことなのですが、損益通算することにより払いすぎた税金が返ってくることになります。
例えば、その年の配当金が50万円あり、譲渡益が20万円あるとします。その20%(厳密には20.315%です)を税金として支払います。よって、14万円が税金として支払われます。
含み損が70万円ある銘柄を保有していたとして、それを売却し損だしをします。儲かった金額が配当金50万円、譲渡益20万円で合計70万円、そして損失が70万円なので、本来0円の儲けになります。しかし特定口座源泉徴収ありの場合はすでに税金が徴収されていますので14万円のマイナスとなってしまっているわけですね。
それを損益通算することによって、支払った14万円を返してもらうということになります。「利益が0円なので、払うべき税金は0円。なので14万円返してね」といった流れです。
含み損の損失を確定させる理由
将来的に、株価が上がるだろうと考えて、含み損のある銘柄を売却せずに保有しているわけですが、売却すると損失が確定してしまいます。そして、再び同じ銘柄を買い戻します。一見すると、損失が確定してしまい、損をした気分になりますね。
しかし含み損が70万円あった銘柄の評価損益が0円から再びスタートできるわけですね。
そして、株価が上がり、含み益が70万円に達すればトータルでみればプラスマイナス0になりますね。その間に損だしによって払いすぎた税金が戻ってきていますので、手元の資金は損だしをした方が多くなります。
もちろん、この銘柄を売ってしまえば、譲渡益70万円に対して再び税金がかかってしまいます。
つまり、損だしとは、税金の先送りになります。永久保有するのであれば、譲渡益にかかる税金を払う必要はありません。税金の先送り、先送りを続けることによって、なるべく税金を支払わずに節税するということになりますね。
損出しの注意点
損だしとは、保有銘柄を売却し、買い戻すだけのことなのですが、注意点が何点かあります。
同一証券口座・同一日に買い戻しはできない
株式の注文で、売却→購入という手順でも、同一日であれば購入→売却として扱われます。
例えば、もともと100株保有で-20万円の含み損があったとします。同一日・同一証券口座で売却し、その後、同価格で買い戻しをします。
その場合、(100株-20万)→100株購入→(200株-20万円)→100株売却→(100株-10万円)と見なされ、含み損を平均化する形となってしまいます。
年内の期限は、最終受渡し日まで
最終取引日、ではなく、最終受渡し日までに損だしを終える必要があります。2018年の場合ですと、12/25(火)15:00までが取引日ベースでは最終日となります。26日以降の取引の場合、受渡しは翌年の受渡しとなります。
12月末の権利日と同じですね。
損出しのやり方
損だしの注意点をふまえ、やり方を解説します。損だしのやり方は、いくつかあります。手間のかかるものから、シンプルなものまでありますので、自分にあったやり方でやりましょう。
シンプルに翌日買い戻し
同一日での買い戻しはできないので、翌日に買い戻しをします。ただし、デメリットは、同じ価格で買い戻せるかわからないということになります。売った銘柄が翌日跳ね上がるそんな可能性があります。逆にものすごく下がりラッキーなんてこともありますね。
一つの証券口座しか持っておらず、信用取引口座を開いていない場合は、こちらのやり方になります。
複数証券口座を利用する
SBI証券で保有している銘柄を損だしのため、売却。楽天証券で購入。とすれば、確実に同じ価格で、売却と購入が可能となります。
証券会社の口座は複数あればメリットも大きいですし、リスク分散にもなります。2つ以上お持ちの方にはこのやり方がオススメです。
前日に現物売却を成行注文します。他方、現物買いを成行き注文します。翌日の寄りで約定しますので、改めて確認してみましょう。
信用取引を利用する
保有銘柄を売却。信用買→翌日に現引き。
信用口座と、特定口座は異なる扱いとなるため、同一日に信用買をしても問題ありません。ただし、現引きは翌日になります。
信用口座を利用すれば、証券口座が一つでもできますね。
損だしにかかるコストを抑える
損だしをするために、現物を売却したり、買い直しをするとコストが発生します。なるべくコストを抑えるためにも、楽天証券をオススメします。
仮に50万円を買った場合ですと、26円程度の金利となります。つまり26円を支払うことにより50万円の現物買いをすることが可能となります。
楽天証券のいちにち信用を利用すれば、格安にコストを抑えることができます。これは、優待クロス取引にも同じことがいえます。
ただし、いちにちなので即日、現渡し、現引きをする必要があります。
ですので、
- 楽天以外の証券口座の保有株を売却
- 楽天証券のいちにち信用買い→即日現引き
をすれば、損だし成功です。
損だし実践
保有株売却
市場はSORでも東証一部でもどちらでもオーケーです。成行売り注文にします。
JTを200株保有しているので200株売却したいのですが、一度に200株注文だと、約定代金が50万円を超えてきます。約定代金が50万円を超えると一気に手数料がかかってしまうので、今回は分割して損だしをしています。
売却コストは270円で済みそうです。
楽天証券でいちにち信用買い→現引き
信用→買建→一般一日→成行で注文します。
約定後に、当日中に現引きします。
以上で、いちにち信用買建→現引きになります。
これで、損だし完了です。カブドットコム証券で売却コスト270円ほど、楽天証券では金利分が14円程度、合計284円で損だしができました。
楽天証券とても安いですね。
こちらが精算画面になります。コストは本当に14円しかかかっていません。
米国株でも損だし・損益通算ができる
米国株でも、日本株同様に損だしが可能となっています。ただし、売買コストが日本株に比べると高いです。
また複数口座で管理することも、日本株に比べ難易度が高く、同一口座での損だしとなると、翌営業日に買い戻しとなってしまいます。
なるべく日本株で損だしをしたいですね。
ブリティッシュ・アメリカン・タバコを損だししてみました。売却単価と購入単価にずれが生じました。
また、売却コスト・買い直しコストそれぞれ上限の20ドル、合計40ドルかかってきます。小口投資家の場合は、あまりうまみがないかもしれません。
NISA口座は損だし・損益通算はできない
気をつけたい点として、NISA口座では損だしができないということになります。損益通算もできません。
損益通算ができないのは、NISA制度のデメリットでもありますね。
株主番号が変わる可能性がある
一旦売却をし、買い直しをするので、株主番号が変わる可能性があります。株主番号が変わるデメリットは、長期保有株主優待などを出している場合です。
株主番号が変わると同一株主と認められずに長期保有優待を受けられなくなります。長期保有株主優待を出しているかどうかを知る必要がありますね。
オリックスやKDDIなど、長期保有株主優待を出しており、近年、長期保有優待制度を出す企業が増えてきていますね。
※KDDIより引用
まとめ
損だしは、税金の先送りになります。
- 含み損銘柄を保有
- 本年に配当収入もしくは譲渡益がある
という方にオススメです。
- NISA口座には非対応
- 米国株にも対応
- 売却時の株主番号変更には注意
- 楽天のいちにち信用取引がコスト安
以上、参考になれば幸いです。
◯関連記事